インタビュー・シリーズ
ーinterviewー

第6回対談:「技術にこだわり、『最大ではなく、最高を目指す。』経営」
安田工業株式会社 代表取締役社長 安田 拓人 氏

岩田会長(以下、岩田):
 今回のインタビューは、本会の理事である「安田工業(株)の安田社長」です。このたびは、新鋭経営会の社長インタビューにご登場いただきまして、誠にありがとうございます。
 安田社長が率いる「安田工業(株)」は、「母なる機械と呼ばれる工作機械、とくに高精度マシニングセンタ(以下、M/C)」を中心とした製造メーカとして国内外で広く認知されてきました。競合他社よりも優れた精度を実現するため、伝統的なきさげ作業を徹底的に活用されたてこられたことでも有名です。
 国際的なステータスを獲得されてこられた背景には、会長時代の先進的な取り組みも高く評価されるところですが、本日は、現社長のこの数年間の歩みをベースにお話をいただければと思います。
 需要変動が極めて大きな工作機械業界の経営者として、日々、絶え間ない思考と行動を反復されるご苦労は並々ならぬものがあるのではないでしょうか?
 まず、「経営理念(ミッションや行動指針)」のポイントについて、ご紹介くださいませんか。

 

安田社長(以下、社長):
 われわれ安田工業は創業時から87年が経過しました。主な事業は工作機械の製造と販売です。長年、工作機械業界に携わってきているため、業界のもつ考え方をかなり受け入れてきています。
 少し振り返りますと、日本の工作機械業界は過去30年に亘って世界の中でトップクラスを維持し、日本の強い産業分野の一つでした。しかし、需要変動が大きく、バブル崩壊のあとは需要が1/3に低下しましたので、経営への影響は大変大きなものになりました。この需要変動の波は昔から変わらず、80年代は4~5年の周期でしたが、最近は6~7年周期と少し伸びてきたような感じです。
 変わったことは内需と外需の比率です。80年代までは内需が7割でしたが、最近では3割程度に減っています。その主な理由ですが、一つは販売の6割が自動車産業向けであり、日本の多くの自動車メーカが海外生産にシフトしたこと、二つはアジアを中心とする新興国、中国やタイなどの需要が大きく増大したことがあげられます。言い換えますと、外部市場環境、海外市場で大きな変化が起こったのです。この変化に如何に対応していくかが、主な経営課題となりました。
 私は、平成9年社長となり、6年が経過しました。前社長時代のバブル後の売り上げの落ち込みは厳しく、約1/3に低下し不景気が2~3年続きました。これに対処するため、当時の社長(現相談役)は二つの方策を実行しました。
 一つは従業員の削減は行わない。これはいったん、熟練度の高いエンジニアなどの人財を失うと高精度の工作機械をつくる能力が失われ、のちに回復ができなくなるからです。そこで、資産の売却、役員・社員の給与の引き下げ、下請け加工など、やれることは何でもやり、皆で我慢をして、企業存続を図りました。もう一つは新規事業開拓へのチャレンジです。その後の成長分野に繋がる、「売れる機械をつくる」というものです。一言で言えば、金型市場向けの機械でした。当時、携帯電話が市場に登場し売れ始めたころで、モデルチェンジが数か月単位で頻繁に行われるようになりました。そこで使われる、カバーやボタンなどの金型は加工をすばやく行なわねばなりません。しかし金型は焼入されたHRC40以上の硬い材料だったため、当時は放電加工で作成され、時間がかかったのです。
 そんな折に、あるユーザからの提案もあって、「自分たちの技術を活用して、なんとか短時間加工が実現できないか」と考えました。これが開発の発端です。当時出始めた、被覆工具や3次元CAMなどの新規技術を利用しながら、硬い金型材をダイレクトに加工(直彫り加工)する、金型加工向け高精度高能率M/Cを試作したのです。これが時代のトレンドに合い、ベストセラーに繋がりました。
 この金型加工用M/Cは、事前に仕様を固められたことから、従来の受注生産から計画生産へ変換が可能となり、経営面からみて一つの転換点だったと考えています。

 

岩田:
 今お聞きしていて、経済の変動や市場の変化は当然の現象として前向きに受け止めようとされているように思えます。では、市場の変化の中で経営判断をするにあたって、どのような基本的な考え方をお持ちでしょうか。

 

社長:
 まず、工作機械はものづくりの道具ですから、一種のインフラです。ということはものづくりが存在する限り、基本的になくならない産業であると思っています。その前提で、私が大切にしている経営にあたっての判断規範として、次のようなことがあげられます。これは先ほどお話しした、先代社長のバブルを乗り越えた経営判断への共鳴から生まれています。

① 景気は上がったり、下がったりするもので、受け入れるしかない。下がったときにどう対処して存続するかが重要である。ただ、下がっても、また必ず上がる。
② 人財こそ全ての事業活動の源である。苦しくても熟練人財は温存せよ。また、人財育成に力をいれろ。
③ 開発には力を入れ、新しい市場を作れ。開発する(人員的、資金的)余裕をもて。
④ 時代のトレンドに乗れ。
⑤ 不景気のために、自己資本を厚くしろ(自己資本率を上げ体力をつけろ)。
⑥ 計画生産できる製品を持て(不景気でも工場を遊ばせるな)。 

上記のような考え方にたって、経営戦略と製品戦略を考えています。

 

岩田:
 その考え方に沿った経営理念は如何でしょう。

 

社長:
 経営理念につきましては、2015年度にスタートした2025年に向けたビジョンと中期経営計画の中で、改めて定義しました。
 まず、我々は以前より、「最大ではなく、最高を目指す」というYASDAスピリットがあります。これはいたずらに規模の拡大を追うのではなく、最高の製品やサービスを提供することで成長しようとする精神です。次に、ミッションとして「世界のものづくりを、技術と誠意で革新する。Best Machine & Best Solution」を掲げました。ここで今までと違う部分は、「世界の」というところと、「ソリューション」というところです。
 国内市場が縮小する中で、海外販売を伸ばすことが大切と思い、海外営業の組織を拡大し、新たな販売代理店との提携などを進めてきました。このように海外販売の拡大をハッキリさせたのです。私が社長になるまでは、海外での販売比率は3割を切る程度でしたが、最近は4割を超えるようになり、少し結果が出始めています。また、ソリューションという面では、機械というハードを提供するだけでなく、サービスや加工技術のノウハウなどソフトの提供を充実することを打ち出しています。高精度加工をハード面、ソフト面でサポートしようというのです。

 

岩田:
 続きまして、企業経営に関して、最近、特に、嬉しかったことや心のときめきを感じたことはありましたでしょうか。あれば、ご披露いただければと思います。

 

社長:
 いま、触れましたことですが、海外の販売比率が、最近は4割を超えるような、目に見える成果がではじめたことは目標を設定した者にとっては嬉しい限りです。次に市場のニーズをしっかり把握して、新製品やサービスを開発することについてです。近年成長している航空機産業に向けて、特にジェットエンジンの部品加工向けの横型5軸M/Cを開発し、販売を始めました。機械仕様やコストについては、予定されるユーザにもしっかりとリサーチして、近づけるように努力しました。以前にも似たような仕様の機械があったのですが、ターゲットが絞りきれず、ビジネスとしてはあまり上手くいってはいませんでした。しかし、今回の機械は予想以上の台数が数年で販売でき、中でも米国のGEジェットエンジン部門に販売できたことは大変うれしいことでした。
 同じように、微細加工分野に投入した新しいタイプの機械も、うまくトレンドをつかめたのか、販売好調です。このときも、ターゲット市場をずいぶん意識して、仕様やサイズ、価額をつめていきました。今まではほとんど販売できていなかった領域で売れていることは、有難く、うれしい出来事です。

 

岩田:
 逆に、問題解決に苦しんだり、悩んだりしたことはありましょうか。あれば、その克服への考え方,方策、決断、行動などをご紹介くださいませんか。

 

社長:
 悩みや苦しみといえば、中期経営計画の作成とその推進についてです。実は社長就任時、中期経営計画を作成したことがあるのですが、そのときは作成してすぐに頓挫する形で終わってしまいました。ちょうど作成した直後に、リーマンショックが起こり、それどころではなかったということもありますが、やはり社内を上手く巻き込めていなかったこともあったように思います。
 そこで、今回の中期経営計画は、まず取りまとめる部署を作り、コンサルタントにも手伝ってもらい、管理職の方を中心に、計画作成の段階から多くの人に参画してもらって一緒に作り上げるようにしました。また、作成してスタートした後も、進捗管理を四半期ごとに行いながら、前進するように気を付けるようにしています。まだ、完全とは言い難いですが、前回よりはスムースにいっているような手答えを感じています。
 もう一点。私は社長になって、個々の能力に頼るのではなく、組織力で経営を進めるスタイルにしたいと思い、頑張っています。組織的な活動をするためには、中期経営計画のようなシナリオと、それを推進していく管理者の管理能力を強くする必要がでてきます。その結果として、組織を少しずつ大きくして、中小企業から中堅企業に育てたいと思っています。

 

岩田:
 企業の業績は市場環境に影響を受けながら、かなり大きく変動してきたようですが、直近は堅実な業績をあげておられます。「業績向上、成長」の背景にある基本的な考え方・実現への基本理念については、どのように理解すればよろしいでしょうか。

 

社長:
 すでにお話しましたように、コアは時代のトレンドに乗る経営です。成長市場である、航空機産業や微細加工分野など、そういった分野への製品投入を積極的に行っています。また、海外市場へも積極的に販売展開を図っています。円高是正による市場環境の改善や、今までの取り組み効果と相まって、直近は良い結果がでていますが、景気に関しては今後警戒が必要です。
 基本的には、国内市場は縮小、世界の市場は成長といった傾向です。そして、国内市場は、より高精度、より複雑で高度な加工が要求されていきます。そこで、我々は、国内市場には加工技術などを含んだ加工ソリューションやサービスの拡充を行い、販売を伸ばすことを考えています。
 また、工作機械以外に関しても、保有している技術を応用しながら、新規事業を考えていくつもりです。現在も液晶製造装置をOEM生産する事業があり、この数年売り上げを伸ばしています。

 

岩田:
 企業業績を向上させている主な理由には「技術開発」があるようですが、「技術開発」における基本的な考え方、例えば、①開発課題の選定、②課題に取り組む社内の体制や社外との連携、③開発の成否の判断、④事業化への仕組み、などについてご紹介いただけませんか。その実行段階における経営者の関わりも含めてお話しいただければと思います。

 

社長:
 まず、開発課題の選定について。工作機械事業の場合は、顧客にどのような価値を提供するかについてよく考えるようにしています。我々の強みである高精度M/Cに関する要素技術を含む技術開発がとくに重要ではありますが、最近は加工技術に関する開発についても必要性が増しています。ユーザ・ニーズの多様性とともに、機械はますます複雑化しており、測定や操作性など様々な技術開発の必要性が増してきており、社内だけでは対応しきれないのが実情です。

 ②の社内の体制について。 ハード面の技術開発に対しては、主に、技術部門が対応します。しかし、キサゲ加工など現場で精度を作り込む工程が重要な場合には、製造部門と連携しながら、作り込みの工程を考慮した設計(測定できるとか、修正できるとか)になるように気を付けています。加工技術に関する開発は、技術部門と営業部門内の営業技術課が携わります。一方で、機械が複雑化・高度化する中で、社内の開発だけでは成り立たないことがでてきました。そこの部分は大学やユニットメーカと連携して研究開発することになります。例えば、ユニットの特性を理解して、自社製品に合うように製品開発をしてもらうとか、チューニングするとかです。
 
 ③開発の成否判断について。 本来、我々がしなくてはならないのは、ユーザが満足する価値の高い新しい加工の提案を行ない、それを実現する為の製品やサービスを提供することです。結果として我々が利益を得ることができれば、その開発イノベーションは成功であったといえましょう。ただ、現実には、製品の開発前に想定したような販売ができたかどうかで成否判定をしています。
 
 ④事業化への仕組み。 ターゲット市場をあらかじめ設定して、そこに向かってYAS
DAの技術や特徴を生かせるか、企業文化に合っているかなどを、経営陣が総合的に判断したうえで、良ければスタートとなります。

 

岩田:
 技術開発の分野では、従来から多くのキーワードが提案されてきました。すでに、高機能化、高精度化、微細化などについては触れていただきましたが、自動化、複合化、インテリジェント化などについてはどのように考えておられましょうか。

 

社長:
 まず、自動化ですが、これは絶え間なく進んでいくように思います。我々の得意分野に関して言えば、高精度加工を如何に長時間無人で実現できるかという課題となりますが、やはり機械の一層の高精度化や温度変化にも対応できる設計であったり、パレットチェンジャなどの信頼性向上などが大切になります。一方で、これは「インテリジェント化」にもつながりますが、IoTやAI技術などを活用して、機械自身が故障予知を行い予防保全できることや、熟練オペレータのノウハウを機械に取り込んで活用できることなども求められてくるように思います。これらについては、注目し検討を始めているところです。
 次の「複合化」は、これまで独立で処理されていた生産プロセスが一体化されるという意味に解釈しますと、これから実用化が進むのではないでしょうか。例えば、切削と研削の複合、加工と焼き入れの複合、加工と表面処理、加工と計測など。これにはハードとソフトの統合と、機械としての全体的調和にも配慮が必要となります。また、従来の加工技術と3D積層技術などの新技術との複合化も視野に入りそうです。いずれにしても、これらの方向はお客様の要望に沿うかどうか、という点が最大のポイントになってくると思っています。

 

岩田:
 企業は継続することが最重要な経営課題でしょう。企業レベル、事業レベルで継続されるために、現在どのようなことを考えておられますか。

 

社長:
 企業存続のために一番大切なことは、市場にマッチした競争力のある製品やサービスを持つことであり、そのベースにあるものは技術力です。強い技術の獲得には次のような取り組みが不可欠と考えています。
① 顧客のニーズを知る(市場を把握する)。
② ニーズを満たすために、必要な技術の開発もしくは外部から導入する(開発に投資する、世の中の技術をよく知る)。
③ YASDAにしか出来ない現場技術を磨き、伝承する。
④ 社員が長く勤められる環境を整える。
⑤ 継続的に利益を出して、財務体質の強化(自己資本率の強化)に努める。
⑥ 変化を恐れず、チャレンジする。場合によっては従来の事業を捨てて、新事業に取り組む。

 

岩田:
 企業の生存には安定的に収益を得ることが必須です。収益を得る仕組みについてどのように考えておられるでしょうか。

 

社長:
 これまでの話と重複するところが多いですが、何よりも顧客ニーズに合った製品・サービスをタイミングよく提供し続けることが、継続的な売り上げや収益につながると考えます。例えば、金型加工用のM/Cでは、最近のトレンドとしてSKDなどの金型材だけでなく、超硬の加工が可能な機械や加工技術の開発を進めています。さらにそのトレンドを先取りして開発することによって競争力を高め、収益も確保しやすくなります。先取りの取り組み例としては、金型の5軸加工や航空機で使用されるチタンやインコネルなどの難削材への対応などがあります。
 市場ニーズのトレンドの把握は、潜在的な顧客から持ち込まれる、加工技術の課題に真摯に応えていく作業、例えばテストカットなどを通して、掴んでいます。課題はどんなに困難に思えても、まずはチャレンジし、深い試行錯誤の繰り返しの中で、ハード面、ソフト面で解決を目指します。この取り組みはトレンドの把握のみでなく、技術力の向上にもつながっていきます。

 

岩田:
 企業生存とも絡みますが、今後(3年以内)に解決したい課題を挙げていただけませんか。

 

社長:
 今後の優先的課題に、高精度加工のソリューションがあります。我々は、高精度M/Cというハードを作って、販売することをメインの事業としていますが、単にハードを売るモデルだけでなく、高精度加工を実現するためのソリューションをもっと提供したいと思っています。具体的には、加工プロセスや加工条件などの加工ノウハウや測定ノウハウといった、ソフト面を含んだソリューションといったイメージです。3年以内にいくつかのソリューションを商品化する予定です。
 また、海外市場の販売比率を安定的に4割強に伸ばす目標があります。海外市場は成長過程ですので、国内市場が高かった我々にとっては、成長の余地が大きいと期待しています。その中で、北米市場は3倍程度の成長が目標です。
 さらに、景気変動に耐えることができる、言い換えれば経営の安定化に寄与する新規事業の創出とそれを事業の柱の一つに育てることも3年内に実現するつもりです。

 

岩田:
 将来、2025年をイメージして、どのような企業になりたいとお考えでしょうか。
 その際、特に考慮される要因はどのようなことでしょうか。

 

社長:
 10年は長いようですが過ぎ去ればあっという間の時間かも知れません。我々が、10年後も元気に生存しつづけていることが、経営者に課せられた責任です。生存には進路を指し示す羅針盤が必要と考えまして、基本的に3つのビジョンを掲げました。
① 「真の価値の提供」。お客様にとって本当に価値あるものを深く考えて、解決策であるソリューションを提供する。
② 「最高を世界へ」。海外市場へ積極的に参入し成長させる。
③ 「100年企業に向けて」。当社はあと13年で100年企業となります。100年企業は我々の一里塚です。企業の存続には、強い企業であることが必要です。財務的にも経営的にも安定化を図らねばなりません。この一環として新規事業へのチャレンジも前向きに進めていくつもりです。

 我々は今年、従業員が300名を超えました。少しずつ、確実に成長して、中小企業から中堅企業を目指します。100年を社員や関係者とともに、皆が幸福感をもって祝えるように、進路を間違えることなく進めるようにと覚悟しているところです。

 

岩田:
 社長がもっておられる経営者の価値観、あるいは考え方、また哲学として、どのようなことを念頭においておられますか。

 

社長:
 とくに座右の銘といったものはもっていませんが、経営に関して言いますと、ドラッカーの著書には感銘を受けていまして、プロフェッショナルな集団が、合理的な行動をとって成長・発展を遂げていかねばならないと思っています。
 企業においては、個々の人たちが、与えられた役割や仕事を全うする、またそうした仕事に誇りとやりがいを持って取り組めることができればよいなと考えています。そうした環境を整えて、個々の能力を組織の中で活かすことを考え、顧客を満足させることが、経営者の役割と思っています。
 YASDAに関わる全ての人たちが、幸福になれることが理想でしょうか。

 

岩田:
 社長から、「社員をはじめ関係者の幸福度を最大にするため責任を持っている」という哲学を披露していただきました。深い共感を覚えます。ところで、社長が考慮すべき視点をもう少し具体的に述べてくださいませんか。

 

社長:
 私が感じています、社長が持つべき視点を、箇条的に整理してみますと、次のようになります。
① 顧客ニーズを掴んでいるか、市場を理解しているか。
② 成長産業もしくは高収益産業に属した市場か。
③ 継続性があるか。
④ 他者との差別化ができるか。
⑤ 自社の強さや企業文化と事業がマッチしているか。
⑥ 採算は合うか。
⑦ その事業を自分が好きか。

 

岩田:
 今後、社長を目指す人々へのメッセージは如何でしょう。
 後継者に求められる社長の素養について何が重要でしょう。ご意見をお聞かせください。

 

社長:
 経営者には、人から与えられるのではなく、すべてを自分で考えて実行できるという面白さがあります。もちろん、自由の反面で、すべての責任は自分にかかってくるとも言えます。経営には種々な要素が複雑に絡み合って、思うようにいかないことも多いのですが、思った通りに行った時の喜びは大きいのです。また、リスクがある分、リターンも大きく帰ってきます。
 そして、顧客を満足させることや、社会に貢献できるということでも、大きなやりがいを感じることができます。
 社長の素養については、やり方が多様なのではっきりは分かりませんが、いろいろなことに目配せができることが一つあると思います。

 

岩田:
 新鋭経営会へのアドバイスあるいは期待はありましょうか。どのような経営者の参画が望まれましょうか。

 

社長:
 新鋭経営会は中堅・中小企業の経営者の仲間が集い、より良い経営について勉強し議論できる、非常に内容の濃い学びの場だと思います。毎回、講演いただく講師の方々は、その分野でトップクラスの方々で、そこで聞いた内容には、企業経営の未来を考える上で大変重要な内容が含まれます。こういった場を、岩田先生を中心とする先生方のご厚意で設けていただいていることに、いつも感謝しています。
 運営が、個々人の力に頼ってしまう面がありますので、より組織的な運営が、継続する上では良いのかも知れません。一方では、組織が大きくなるにつれ、機密性の面も考慮すると、深い議論をしにくくなるということもあると思いま。このあたりのバランスが難しいです。
 参画する経営者としては、会社に特徴を持ち、経営に前向きに取り組んでいるような方だと、お互いに刺激を与えられ、良いのではないでしょうか。今後にも大いに期待しています。

 

岩田:
 長時間、貴重なお話をいただきまして有難うございました。
 景気変動の荒波を乗り越えながら、100年企業を視野に入れておられます。社長のリーダーシップのもと、人間の熟練能力を活用し続けながら、成長を続けておられることにある種の感銘を覚えます。同時に、価値規範として「幸福度」を標榜されていることにも共感を覚えています。
 今後、ますますのご発展を衷心より祈念いたします。

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