インタビュー・シリーズ
ーinterviewー

第3回対談:「ITの活用による持続的成長に向けたイノベーションと経営革新」
株式会社木村鋳造所 代表取締役 木村 寿利 氏

岩田会長(以下、岩田):
 今回のインタビューは、本会の理事である「(株)木村鋳造所の木村寿利社長」です。このたびは、新鋭経営会社長インタビューにご登場いただきまして、誠にありがとうございます。
 木村社長が率いる「(株)木村鋳造所」は、これまでフルモールド鋳造技術をコアとして、産業機械、自動車、工作機械など多分野への事業展開を図られ、着実な成長を遂げてこられました。その成果は、「大河内記念生産賞」や「ものづくり日本大賞:経済産業大臣賞」をはじめ、種々の表彰として実り、社会に広く認知されてきました。
 このような大きな成果を生み出された背景には、先代の先進的な取り組みも高く評価されるところですが、本日は、現社長のこの5年間の歩みをベースにお話をいただければと思います。2011年に社長が就任されて以後、3Dプリンティング技術に関する新規事業の展開を鋭意進められておられると伺っております。
 就任されて以来、経営者として絶え間ない思考と行動が反復されてきたものと想像いたします。まず、「経営理念(ミッションや行動指針)」のポイントについて、ご紹介くださいませんか。

 

木村社長(以下、社長):
 木村鋳造所の経営理念は、これまで「フルモールド鋳造技術を革新し、顧客の満足する製品を提供する」ことでした。フルモールド鋳造法の革新は我々がやらねばならないミッションで、この分野に特化してやってきたのが、先代社長までの時代でした。しかし、フルモールド鋳造法だけにとらわれていると、新たな市場や求められる製品に対して対応しきれない、別の言い方をしますと、少し足かせになってきた感じがしています。
 とくに、リーマンショックまでは国内市場の鋳物の生産量は約550万トンありましたが、その後、約300万トンに減少しました。その後徐々に戻っているものの、400万トンぐらいが続いている状態です。このため、多くのメーカーが海外に工場を作り、海外生産・調達に走りました。結果として550万トンに戻ることは期待できないと思われます。
 そこで、新たに3Dプリンティング技術に取り組むことを決め、その背景となる経営理念の明確化を図りました。新たな経営理念、それは「私たちは鋳造の革命児となり、産業基盤を支える素形材を世界に提供し、絶えず社会に貢献します」というもので、2016年1月1日より掲げています。我々のやりたいことは、鋳造の革命児になることで、その中にフルモールド鋳造法や3Dプリンティングを位置付けます。そこには3Dプリンティングを使った鋳造やIT技術を活用した鋳造技術などが含まれます。このように、これからは「鋳造の革命児」にこだわって経営をしていこうと考えています。
 一昨年来、フルモールド鋳造法のみからの脱皮を図ろうと、社員にはフルモールド鋳造のみでなく、「何でもできる」ということを語りかけてきました。

 

岩田:
 いま仰しった「鋳造の革命児」という理念は興味深いですね。同時に社長の経営のありかたへの思いがひしひしと伝わってくる感じがいたします。では、理念を実現する戦略、あるいはコンセプトとしてはどのようになりますか。

 

社長:
 我々のコンセプト、また行動指針ですが、培ってきた鋳造分野における、「IT+IT=∞」とまとめています。初めのITは、Information Technologyで、 2番目のITは、Iron Tactics(鉄の戦略、これは意志の強さと鋳造技術の発展をイメージする造語)です。この二つの融合で、結果として無限大の可能性が生まれることを意味しています。その一例として、3Dプリンターとそれを動かすInformation Technology の融合、これをDMP(Direct Mold Process)と呼んでいますが、ビジネスとして実現できるようになってきたと考えています。

 

岩田:
 コンセプトは分かりました。このコンセプト・戦略の具体的実現、あるいは戦術につなげていくには、社員の方々とよく話し合う中で十分に理解していただき、積極的に貢献していただくことが必要になるのではないでしょうか。
 社長になられてからこの5年における社員の方々との話し合いの経験の中から、とくに嬉しかったこと、あるいは心のトキメキのようなものを感じられたりしたことはありましたでしょうか。あれば、何なりとご披露いただけませんか。

 

社長:
 3Dプリンター・ビジネスについてお話します。始めようとしてから3年目で黒字化が実現できました。いろいろな形で夢がかなうことは嬉しいものですが、これで社員と進む方向が共有化できたことは非常に嬉しく感じたことでした。
 しかし、事業が始めからうまくいったのではありません。当初は社内の理解が得られず社長の道楽のように言われました。しばらくして、国のサポインに採択されて「3Dプリンター技術」についてのスキルが獲得できました。そのスキルを活用しないのはもったいない、また国際的動向として3Dプリンターの注目度が上がってきたこともあって、1年ほどの間、社内で話し合いを続けました。その結果、社長の熱意が徐々に浸透し始め、重い石も動くようになりました。いったん、重い石が動き始めると理解度と協力は一気に加速し、3年目で黒字化することが出来ました。その主な要因は、社員の理解と非常な努力によるものと感謝しています。
 それからもう一点。
 我々はリーマンショック以後、大変苦労しました。我々は素形材産業ですから、お客様の設備投資がないと生きてはいけません。その経験が、今後、もし、リーマンショックのような状態が再来しても生存可能なような対策を事前に十分に取っておくことが不可欠だということを教えてくれました。
 その背景にありますのが、リーマンショックが発生した際の社長の対応でした。社員を一人も解雇することなく耐え抜くために、できる限りのコストダウンをするとともに、新規の研究開発も行いました。その時、ボーナスダウンなどの処遇にも耐えながら苦労してついてきてくれた社員への思い、感謝の念は今も持ち続けています。

 

岩田:
 いい話を伺いました。企業も景気の変動は避けて通れませんから、生存のための対策は事前に十二分に考えておきたいですね。レジリエンスの問題です。
 ところで、先ほどのお話で出た、社員という言葉ですが、一言で社員といっても役員も管理職、また専門分野の担当など、種々のかたがおられます。新しく事業を起こそうとするとき、社長が想いを共有したいと考えられた社員は、どのようの方々だったのでしょうか。

 

社長:
 7~8名の役員メンバーの理解がキーであり、第一だったと思っています。組織ですから、まず、役員に、そして役員が部下に話をする筋道を守るのが大切だと思い、そのようにやってきました。

 

岩田:
 「役員に話をする」という場合、具体的にどのように行われたのでしょうか。勤務時間内、アフターファイブなど、また話しかたにもいろいろなやり方があるように思いますが。
 新しい事業を起こすとき、どんな形で伝えると最も効果的なのでしょうか。

 

社長:
 時あらば、あらゆる機会をとらえてやりましたね。役員会、研究会、飲み会など。
 理解を得るには、情報を共有しないとうまくいかないですね。一人でも情報が欠けていると、反対となってきますから、情報共有がベースになります。
 従来から、木村鋳造所の組織風土として、「情熱・創造・調和」の三つの気持ちと、「内外情報が共有され、話し合いによる行動」を掲げてきました。そこで、自分のもっている情報をすべて提供しました。

 

岩田:
 いや感心しました。情報提供のことは、頭の中では分かりますが、いざ実行しようとすると大変なご苦労ではなかったのではないでしょうか。お話をするといっても、良いこともあれば悪いこともある。リスクを担うこともある、といったように、これらすべての話をするのが良いか、話し方や話す場で最も効果的なものは何かありましょうか。例えば、フェースツーフェースが良いのか、情報媒体を合わせて行うのがよいのか、ご経験の中ではどうでしょうか。

 

社長:
 それは、フェースツーフェースがベストですね。メールなどの情報提供は一方通行ですからあまり意味がない。自分の想いを伝えるにはフェースツーフェースで、分かってもらえるまでとことん話し会うのが最も効果的だと思います。

 

岩田:
 話をするときも社長からの一方通行でなく、社員の意見もよく聴いてあげる、双方向の話し会いが大事ですよね。

 

社長:
 そのとおりです。自分がやりたいといっても、全面的に否定されたり、納得してもらえなければ、一方的に押し切ることをせず、皆が納得したうえで行動するという考え方でやってきました。

 

岩田:
 しかし時には反対があっても、あるいは少々リスクを冒しても、前に進めなければならないという決断に迫られることが出てきますよね。別の視点でいうとトップのリーダーシップにともなう苦しみというのでしょうか。

 

社長:
 確かに苦しみはあります。しかし、社長としては会社全体を見ていますから、各部門の利害に囚われすぎることなく、判断していかねばならないと思っています。

 

岩田:
 良く分かりました。次に業績に絡む話題に入らせていただきます。
 企業の最近の業績は堅調な足取りをたどっておられるようですが、業績向上、成長の背景にある基本的な考え方、実現への基本概念については、どのように理解すればよろしいでしょうか。

 

社長:
 景気に左右されることはあるのですが、基本的には我々の目標をしっかりもって、社員の夢を共有することが大切だと考えています。この内容は研究会、朝礼,夕礼などの機会に現場を訪問して、自分の想いを伝え、情報を共有し得るように、日々努力しています。
 同時に、長期的な経営戦略もしっかり考え、2016年には、百周年に向けて10年計画を策定いたしました。

 

岩田:
 10年計画といわれましたが、最近は長期計画といっても5年とか3年と言われる方もあり、多様な考え方が出ています。10年後の目標には、定量的というか明確な数字を出すのですか、それとも定性的な説明の範囲ですか。

 

社長:
 定量的な数字を出します。従来は長期的でも3年をベースにしてやってきました。3年というとほぼ想像できますから、どうしても現在の延長線上の改善や改良に留まってしまいます。しかし、限りない挑戦をしたかったので、あえて不透明な10年を検討しました。その結果、現在の売上高を倍増以上にするという計画を立てました。従来のペースでいくと、10年後では計画が達成出来ません。そこで計画との差額をどのように考えるかが問題となります。この差額を埋める方策を生み出すのは経営者の責任だと考えており、これにチャレンジしたいと思っています。あえて10年計画を設定して、その後逆算して直近の3年計画を策定しました。
 これには米国のアポロ計画(1961年の計画、1969年に月面に到着)が念頭にありました。まずは長期の計画が大事だと。人間は普通にはステップアップできないので、そのトリガーとなる10年計画を立てたのです。そこには数字だけでなく、我々のやりたい方向として「スマートファンドリーの実現」を明記しました。
 スマートファンドリーとは以下のように定義しています。
 「従来取り組んできたクリーンファンドリーを基礎に、世界に通用する革新的な生産体制と技術そして物の流れに取り込むことにより、安全性、高品質、自動化、無人化といったハイエンドな設備体制となり、高い生産性を発揮できる鋳造工場を我々の手で確立していくことである。また、鋳造版インダストリー4.0(IoT)の考え方を取り入れ、顧客・製品・各種設備の情報がお互いにネットワークを組むことにより工場内が最適化され、高い生産性に向け相乗効果を発揮しえていることである。」

 

岩田:
 なるほど。新しい日本発の技術を世界に発信していきたいと。
 売上大幅増加計画達成の為の中身ですが、いまチャレンジし始めている3Dプリンター技術ですか、あるいは他の新技術ですか。このあたりはどのように考えておられるのでしょうか。

 

社長:
 3Dプリンターも含みます。これは、国内での生産は限界がありますので、米国など海外での売り上げ増を考えています。
 そのほか、リバースエンジニアリングを2016年度から立ち上げました。これは50年培ってきたフルモールド鋳造法のスキル、とくにIT技術の他分野への展開です。
 たとえば人間の等身大の模型、これは展示用あるいはコンサートホール用の模型ですが、3DデータからNC機やロボットを用いて作ります。

 

岩田:
 今、言われた技術はCTスキャンした測定データを用いて加工するものですか。

 

社長:
 そのとおりです。材質としてはウレタンを用いて製作します。いま展覧会やTV局の舞台装置用を作っており、いままで付き合ったこともないTV会社、広告代理店,看板屋さんなどとコラボレーションを始めています。
 このように産業系の鋳物だけでなくて「革命児」という広い経営理念の切り口から新しいビジネスを手掛けるようにしました。
 このように見ていきますと、リバースエンジニアリングの中で、最終的に鋳物に繋がってくるものがかなり多くあることに気づきまして、現在具体化を検討しているところです。

 

岩田:
 これまでのお話を伺うと、伸びていくためには自社の継続的な技術開発が非常に重要になってきますね。開発の基本的な考え方や社内の体制、また事業化との結びつけへの考え方は如何がでしょう。その中で、技術開発の意思決定に対する社長の関わり方はどのようになっているのでしょうか。

 

社長:
 技術開発部門は社長直轄です。会社がやりたいことには社長が直接かかわることが大切です。製造部に開発組織があると、どうしても改良的、問題解決的な色合いが強くなってしまいます。会社としては先行投資的な開発をしたいので、社長直轄としています。
 その中で、鋳物の素材開発のみでなく、プロセスも含め、模型作りのIT分野の技術開発にも力を入れています。さらに最近では、スマートファンドリー実現を目指して「IoT課」を設立しました。ここでは将来の必要技術の開発を担当しています。
 開発テーマの選定は、役員が参加した「開発会議」で、提案テーマに対して、ユーザのニーズや社内の取り組み可能性などを総合的に検討して決定します。

 

岩田:
 選定されたテーマ数と開発担当者数は何名ぐらいでしょうか。

 

社長:
 開発テーマは約100、開発者は15名ぐらいで取り組んでいます。開発に必要なテーマは次々と決定されてるため、開発者にはかなり負荷がかかっている状況です。

 

岩田:
 とくに基幹的な開発テーマにはどんなものがありますか。

 

社長:
 根幹的には三つの分野があげられます。一つめはフルモールド鋳造技術の更なる高度化です。この技術はまだ完成とはいえませんので、フルモールド鋳造法で、エンジンのクランクケースを作る際の高品質化と省エネルギー化を進めています。二つめはフルモールド鋳造法を使った鋳鋼製品、三つめはシミュレーション技術の高度化です。

 

岩田:
 技術開発で得られた成果を社内工場に導入する、実用化はスムースでしょうか。

 

社長:
 自社技術を社内工場で利用できるかどうかは重要な問題です。我々は工場を三つ持っており、これら工場はそれぞれが特徴をもっています。生産環境も収益環境も工場ごとに異なります。ですから新規開発技術への関心も工場ごとに差異がありまして、ある工場が開発技術を導入し、そこでの検討結果、成果が出れば、他工場へ水平展開の形で全工場への導入を進めていきます。開発と実用化の連携は比較的スムースに行っていると思います。

 

岩田:
 次に、経営問題について。企業では継続することが最重要課題などと言われますが、社長のところの現在の重要課題はどのようなことでしょうか。企業レベル、事業レベルを含めて。

 

社長:
 これは難しくて、先行きは鋳物の生産量が確保できなくなってくるであろうことを問題視しています。2010年ぐらいまでは、量をこなして利益をあげる拡大戦略でやってきました。この戦略は国内では困難になるということで、3年ぐらい前から付加価値増加型の戦略を重点課題としました。
 この具体例として、3Dプリンターやリバースエンジニアリング、また鋳鋼品など、高付加価値化を進めてきました。これからも量の拡大化は継続しますが、量が少なくても売上が増え、利益が上がるハイブリッド型の経営モデルが必要になってきたと考えています。世界的に見れば量的な拡大はしているので、この戦略も残し、国内的には後者の戦略をとる。
 問題は海外からどれほど鋳物を受注できるかです。
 ディーゼルエンジンのクランクケースをはじめ、コンプレッサ、風力発電用などの受注については、省エネルギー関係の鋳物だと判断して試行を始めています。繰り返しになりますが、問題は鋳物の国内生産量の減少ということがキーだと思っています。

 

岩田:
 今のお話は、国内においては量的拡大による売上高ベースの評価から、量は減っても売上高や売上高利益率を増加させることへの転換ととらえてよろしいのでしょうか。

 

社長:
 ええ。そうです。今年からは重量ベースで評価することはやめようといっています。

 

岩田:
 仰っておられることを延長しますと、これからの経営の視点は、今まで以上に海外展開を考える必要性を感じておられるということになりますか。そうだとすると、国内・海外の比率をどの程度にしたいとお考えでしょうか。

 

社長:
 海外は20%ぐらいまで増加させたいと考えています。昨年までは約8%でした。これからはエネルギー関係の仕事の増加が期待できますので、可能ではないかと思っています。オイル関係は低迷の傾向はあるのですが、ガス、天然資源の動きは活発ですので期待できそうです。

 

岩田:
 海外というと、どの地域がターゲットになってきますか。

 

社長:
 全世界です。といっても広すぎますので、焦点を絞れば、現在は米国とヨーロッパが中心です。少し広角的に考えると、中国、インド、ブラジル、トルコあたりも考えられます。

 

岩田:
 海外に出るとき、工場建設あるいは合弁会社などを視野に入れておられるのですか。

 

社長:
 そうですね。日本は限界がありますので、チャンスがあれば米国に拠点を作りたいと思っています。分野としては3Dプリンター。これは設備投資があまり大きくありませんから、まずトライする対象として適しているように思います。もしそれが成功すれば、フルモールド鋳造法などのコンセプトを海外に展開することになるかもしれません。

 

岩田:
 次の話題に移らせていただいて。
 今後、3年ぐらいの間に、解決しておきたい課題としてどんなことを念頭に置いておられますか。

 

社長:
 木村鋳造所としては「スマートファンドリー」のコンセプトを確立し、実現させることを目標においています。ですから必然的にこの関連の開発課題が中心となってきます。

 

岩田:
 コンセプトの実現性を確かめることが最優先ということでしょうが、マザー工場は国内でしょうか。それとも米国やヨーロッパを考えておられますか。

 

社長:
 まず、国内ですね。すでに所有している土地を利用して、モデル工場を建設したいと思います。そこでは種々の新しい試みができないか検討したいと考えています。

 

岩田:
 スマートファンドリーが実現した場合、産業界や社会にたいして最も大きなインパクトは。もしプロパガンダ的に表現すれば、どんな見出しになると想像されますか。

 

社長:
 「世界に繋がる鋳物工場が実現。そこでは世界的にみた最適な生産連携ができる。その実証モデル工場が誕生した。」こんなイメージでしょうか。国際的に大きな生産連携体制が生まれるのではないかと思いますし、我々がその一端を担っている。こんなことを期待しています。

 

岩田:
 世界と繋がってくると、SCMも物流も経営的にも、また技術的、ノウハウも含めてあらゆることが最適連携を指向しますね。とすると背後には全関連情報を総合的かつシステム的に処理する高速・知的で安全な情報運用メカニズムを持っていることが必要になりはしませんか。

 

社長:
 総合的な取り扱いとなると、場合によってはIT関連企業との連携が必要になってくるかもしれません。すでに可能性について検討を始めています。将来的な話になるかもしれませんが、社長としては考え得る種々のレベルのストーリーに思いを巡らせておかねばならないと思っています。

 

岩田:
 最後になりますが、ご体験を踏まえて社長個人としての思いやアドバイスを伺えればと思います。
 一つめは社長業を遂行していくうえでの考え方、または人生観です。
 二つめは将来、企業には参加してくるであろう学生諸君に対するものの考え方や生活上のアドバイスです。
 如何でしょうか。

 

社長:
 まず社長を務める上での自分の基本的な考え方。それはゲーム理論をベースにしています。具体的には、判断は相手の出方次第という考え方です。最も配慮していることは顧客との信頼関係です。会社は自分たちだけでは成り立ちません。お客様に喜んでもらえ、信頼してもらえる関係の維持が不可欠です。たとえ、お客様にいったん切られても、再び戻ってこられたときに、しっかりと仕事を行う対応が大切だと思っています。
 次に人間としては、偏った考え方でなく、種々の分野の幅広いセンスが必要です。学生に向けてのインタビューの折によく言うのですが、「経営者は様々な知識を兼ね備えた文化人になること」と。歴史や芸術や倫理や文化、また技術など幅広い素養を身につけておきたいですね。また、自分が幼いころから身に着けていた、「我慢強さ」は、ひょっとすると人生観に影響しているかもしれないと感じることがありますね。
 さらに、社員に求めていることは「情熱」、「創造」、「調和」の三つの気持ちです。そのうえで夢や目標をしっかりともつ集団として、チャレンジングな風土を築いていければと願っています。

 

岩田:
 最後の最後で、社長の座右の銘は何でしょうか。

 

社長:
 取り立てて座右の銘というものありません。しかし、いま申し上げた三つの用語「情熱」「創造」「調和」は自分の最も好きな言葉であり、ことあるごとに自分に問いかけています。もう一つ加えるとすれば、「利他の心」でしょうか。

 

岩田:
 長時間にわたり、インタビューにお付き合いいただきまして厚く感謝申し上げます。
 有難うございました。木村鋳造所の発展と社長のご健勝を祈念しています。

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