インタビュー・シリーズ
ーinterviewー

第14回対談:「計測とデータ処理の分離を活かして世界シェアNo.1製品を生み出す企業へ -「特異な個」の人財を活かして100年企業を目指す-」
株式会社中央電機計器製作所 代表取締役 畑野 淳一 氏

インタビューにむけて

 

豊田会長代行(以下、豊田):
 本日は株式会社中央電機計器製作所を訪問し,畑野社長から自社の特筆すべき特長,更には会社経営の工夫などのお話しをお伺いいたします。先ずは,インタビューのお時間を頂きありがとうございます。
 株式会社中央電機計器製作所は,1930年創業の87年の歴史を持つ老舗でもあり,寸法自動測定装置,テスト・計測・制御システムなどの開発・製造事業を展開しておられます。2012 年に就任されました現畑野社長は、創業家の3 代目として経営を引き継がれ,順調に事業を展開されて,「はばたく中小企業・小規模事業者300社(経済産業大臣表彰)」を初めとして,技術力と経営手腕が数々の表彰の形で評価されています。更に畑野社長は,女性、外国人、そして若手の活躍を推進する,いわゆるダイバーシティ人事の拡大に尽力され,新・ダイバーシティ経営企業100選(経済産業大臣表彰)に認定されるなど,人材に対する特長ある取組も高く評価されているところです。
 本日は,その計測機器からソフトウェア設計・製作などのものづくりとそのソリューション展開など新しい理念に基づく企業経営の神髄をお聞かせいただきたいと思います。

 

コンピュータの普及がもたらしたシステム構築:社長業を引き継ぐ覚悟

 

豊田:
 それでは、インタビューを初めさせて頂くに当たり,87年の歴史ある企業の,3代目継承の経緯とそのときの社長として会社の経営を引き継がれた時の想いなどからお話いただけますでしょうか。

 

畑野社長(以下、社長):
 そうですね,聞いているところによると,現在は電機事業がコアなのですが,創業時は紙箱を作るような商売からはじめたようです。創業者の祖父は手先が器用で,見よう見まねで電流計や電圧計の修理をはじめたようです。その時に,計測機器には校正が必要であると気付きまして,修理プラス校正を行うようになり,そのうちに,計測器そのものも作れるのではないかということで計器のものづくりを始めたようです。これは本社の創業の始まりのようです。

 

豊田:
 その当時に計測を事業と考えられたようで,それが今もコアとして生きているわけですね。
 その後,2代目のお父様が事業の拡大を行われたのですね。

 

社長:
 1990年に父親が代表者となったのですが,聞いている限りで一番大きなインパクトがあったのは,80年代に入って,コンピュータが出回ってきたことです。コンピュータが出てきて以降コンピュータを使ってソフトの部分に対応できるようになったとか,その手前でいえば,ICが出てきてICを使って計測のシステムに組むことの流れが生まれました。
 ここの本社近くに大阪工業大学さんがありますが,父親の現会長が社としては初めてですが,一気に4人ぐらいの大学生を雇用させていただきました。大学卒の学生さんの力を借りて,ICとかコンピュータが活用できるようになりました。一番の大きなことは「設計」ができるようになったことでした。

 

豊田:
 そうですね,1970年以前で,私の学生時代は,大型計算機が各大学に普及しだした時代であり,大型計算機を使って数値解析を行うことが大きく進展した時期でした。一日中フォートランのプログラムの内容をIBMのパンチカードを打っていたことを思い出します。その当時,ある程度の大きな規模の計算ができることは研究にとっての魅力であり,計算機の応用が著しく発展した時期で,見ている間に大容量化と小型化が進みました。この時期にコンピュータの活用に目を付けられたことは自然の流れでしょうか。
 我々実験系の研究者にとっては,学生時代の実験ではアナログ的な計測が主であり,何とか自動計測や自動処理ができないかと工夫をした時期でもありました。例えば,引張試験中の丸棒試験片の直径変化をポイントマイクロメータで計りデータを取っていたのですが,その計測用に自動化の装置を作りましたが,そのデータの処理に計算機をたたいていました。何とか簡便な方法はないかと考えていましたが,計測とコンピュータを用いたデータ処理をつなげるというところに目を付けられたのですね。

 

社長:
 そうです,その当時のニーズの高いところに事業の主体が移りました。
 それまでは,お客様から図面を頂き,その通りにものを造るという下請け事業が中心でしたが,そこからの脱却をめざし,計測とコンピュータを活用した処理で,設計ができること,計測器も自前で造れるようになって,仕事の幅が大きく拡がることになりました。お客様の要望やアイデアを聞いて,我々がアイデアを具現化することにつながったのです。通常,要望となっているところは,お客様がこんなこと測りたいのだが術がない,試験をしたいのだがその術がないなどのことで,その仕組みを作ってくれというような内容になりますので,それを設計して自分たちで作り上げ,お客様の信頼を得て,事業の拡がりが生まれました。

 

豊田:
 その当時は,計測を通じての情報を得たい,特にデジタル情報を活用できないかという要求は大きかったと思いますので,ある意味,時宜を得た事業展開でもあったのですね。
 ただ,どのようにしてそのような要望情報を集められたのでしょうか。

 

社長:
 やはり当時の社長が積極的に足を使ったということでした。お客様との関係を築いてくれたのが現会長でした。
 例えば,当社は三菱電機様が最大のお得意様ですが,会長がまだ若い時分に出入りしているとき,あるとき,お客様の担当者の逆鱗に触れ,「今後出入り禁止だ」と,大勢の社員の皆様の前で一喝されたことがあったようです。我々の対応が悪かったのか,言い方が悪かったのか分からないのですが,大きなエポックでもあり,その後周りの人の気遣いもいただいて,一喝されはしましたが,このような仕事があるのだがといっていただける方もあり,仕事が拡がってもきました。
 仕事の繋がりはどのように化けるかは分かりませんが,人の繋がりはありがたいことです。

 

豊田:
 このような展開の中で,社長を引き受けられた時期と経緯についてお話いただけますか。

 

社長:
 2012年ですから,現在社長になって6年目を迎えています。リーマンショックが終わってしばらくした時期でしたが,なぜこの時期かというと,現在会長は70歳ですが,還暦を迎えたときに,「65歳で社長を退く」と宣言しました。その宣言通りに代表取締役を退任し,私が引き継ぐことになりました。代表権も持つことなく,全てを譲ってということでした。

 

豊田:
 何か経営的な要因があったというわけでなく,まさに先代の信念だったわけですね。

 

社長:
 そうです。いずれにしても宣言通りにということでした。
 その当時は幸いにもリーマンショックも収まり,業績も安定していた時期であり,幸いにもその後も順調に成長することになりました。

 

豊田:
 社長を継がれたときに,社長業として,どのような意識とか責任を感じられましたか。

 

社長:
 正直申し上げると,社長の仕事とは何だろうとよく分からないままに引き継ぎました。私は営業経験が少なかったのですが,社長は仕事を取ってきてこそ責任が果たせる,すなわちトップセールスで動かないとダメだろうという意識ぐらいしか無かったのですが,今や,いかにして社員が働きやすい環境を創るかとか,いかにして人の能力を活かして経営を伸ばすかといったことを考えるようになりました。それを実現するためには,いろいろと「決断」しなければならないわけです。結局,良くも悪くも,すぐに決断して進めていかなければならない,この決断が社長としての一番の大きな仕事と考えています。

 

豊田:
 まさにその決断に社員の皆様の生活がかかっているので,それだけの重さを感じられているのでしょうね。

 

社長:
 そうです。私は,専務の時代も,営業本部長の時代も,社長が最終的には判断されることだからという感覚を持っていました。だから必要な情報を上げれば良かったわけですが,今や,私がその舵取りをする側になったわけで,私の判断一つで間違った方向に進むかも知れないというプレッシャーを感じています。

 

ユーザーの立場に立った製品作り:お客様が何を求めているかの理解こそが

 

豊田:
 御社の事業のモットーとして『高い技術力を発揮し,「ユーザーの立場」に立った製品作り』を掲げておられますが,ユーザーの立場とはどのようにお考えかをお話いただけますか。

 

社長:
 やはり製品の使い手がどのように使われるかということを,我々がどれだけ理解しているかが大切なポイントと考えています。技術者にありがちなのが,良いもの作ったら喜んでもらえるということでしょう。お客様はそこを求めていないにもかかわらず,我々としては,こんなに良いもの,優れた機能を実現しましたといっても,お客様には響かないことがあるのです。これこそ独りよがりで,お客様で実際に使われる状況を把握できてないということなのですね。
 最近はこれではいけないということで,例えばソフトウェアにおいては,UMLの「ユースケース分析」手法を用いまして,お客様目線で我々が造る計測装置が,どういう機能を持っていて,どのような場面・条件で使われるのかを「図解」で示して,それをお客様と共有して,我々はこのように考えているのですが,それでイメージがあっていますかねというところで「摺り合わせ」を行うことに努めています。言葉で言えば,「お客様の要求仕様に対して齟齬がないかの確認をしっかりすることにしているのです。

 

豊田:
 これこそが「お客様目線」ということですね。それは,誰がどのように行うのですか。

 

社長:
 お客様の要求仕様と齟齬がないかの確認は,オーダーを担当する担当者がメインになって行うのですが,その具体的なツールとしては,仕様の多段階確認でしょうか。
 注文に対して見積書を出しますが,それに必ず仕様をつけますが,その仕様を作成した担当者が考えた内容についてマネージャーとレビューを行います。そこでマネージャー目線で確認して,お客様に投げることにしています。その後お客様で検討され,意図の確認を具体的に精査していただいて,それで良いと言うことならば発注につながります。
 発注されましたら具体的な設計に入りますが,やはり同じプロセスを踏んで仕様書を出します。お客様に同じように精査・確認を頂いて,承認印を頂くようにするのですが,承認いただけると言うことは,我々の考え方,設計が妥当であることにつながるといえます。

 

豊田:
 いま,レビューに精力を注ぎながら進められるとのことですが,この基本的な考え方がうまく機能していますでしょうか。

 

社長:
 恥ずかしながら,うまくいかない場合もあります。本年度は少し齟齬があったりした例もあり,その場合には問題にもなりました。しかし,改めて業務指導書を出して守るべき原理原則を明確にし,この手法をやりきろうということを全社で意識共有しています。
 今は,いたる所でレビューが行われ,議事録が飛び交っています。必ず良い方向に向かうことを確信しています。

 

豊田:
 ある意味,それらは習慣であり,社員の皆様にその習慣を定着・浸透された訳ですね。

 

社長:
 そうですね。ものづくりも急がば回れなのですね。こんなことできましたといっても,こんな点は考慮しなければ,ここはこういうつもりでなかったということで手戻りがあることを避けることにつながる十分なレビューシステムを狙っています。

 

LabVIEWを中心とするシステム・インテグレーションとの出会い

 

豊田:
 ところで,中央電機計器製作所の事業内容については,新鋭経営会でも発表いただきましたように,
 ○ テスト・計測・制御システムの受託開発
 ○ LabVIEWを中心としたSI
 ○ パッケージ製品
  ◇ フィルム寸法自動測定装置(画像検査システム)
  ◇ マイクロコロニー自動計数装置(MACS)
 ○ 計測器のキャリブレーション(校正)
などをあげておられますが,特に,「ナショナルインスルメンツ社のアライアンスパートナー」としてLabVIEWを中心とするテスト・計測・制御システムをインテグレート」で「LabVIEWのプロフェッショナル集団」を謳っておられますが,ナショナルインスルメンツ社とどのような形で繋がりができて,そのつながりをどのように展開されてきたのでしょうか。

 

社長:
 ナショナルインスルメンツ社(NI社)との繋がりを作ってくれたのは現会長で,1990年代の後半に,米国のラスベガスで開催されていたコムデックス(註参照)という展示会に参加したようです。そこでNI社がブースを出していて,その時紹介していたのが「LabVIEW」という開発環境だったのです。今や計測制御の業界においてLabVIEWは国際標準的なツールになっていますが,当時,これは計測制御の業界で革命的なものをもたらすかも知れないツールだと目を付けたようです。ただ,その時には,こんなものがあるというぐらいの認識でした。

 

[註:COMDEX(コムデックス、Computer Dealer’s Exhibition):1979年から2003年まで毎年,ラスベガスで開催されていたコンピュータ関連の展示会。コンピュータ業界関係者だけの展示会だったが,COMDEX はあらゆるコンピュータ関連業者(本体メーカー,周辺機器メーカー,ソフトウェア,アクセサリなど)が集まり,商談のきっかけとなる場になった。COMDEX が見本市として拡大するにつれ、様々な新製品の発表が行われる場ともなり,世界中から多数の小さな企業がCOMDEXで名を上げるために集まった。]

 

豊田:
 NI社のLabVIEWは,米国などでは,既に計測制御に広く応用されていたのですか。

 

社長:
 当時は米国では,それなりに認知度はあり,使われていたようでした。ただ,今でこそワールドワイドで,世界中で6,100名ほどの規模ですが,当時は会社そのものもできたところでもあり,それほど大きな規模ではなく,ベンチャー企業的な規模だったようです。

 

豊田:
 そのような状況の中で,NI社のLabVIEWに着目されたことは,大きなポイントだったのですね。

 

社長:
 そうです,これは我々にとっても結果として非常にラッキーなこととなりました。

 

コンピュータベースの計測機器へ:計測とデータ処理・制御の分離

 

豊田:
 それで御社にとって何が変わったのでしょうか。

 

社長:
 NI社が提唱しているLabVIEWを活用して作る計測のシステムというのは,コンピュータをベースとした計測システムを作りましょうという考え方なのです。そのための最適なツールであるということです。 それまでは,我々はスタンドアローンな測定機器を作っており,測定器としては独立していて,自分たちでボードを買ってCPUをのせ,コンピュータもひっくるめて測定器に載せていたわけです。
 ところがNI社の考え方は,市販のコンピュータをベースにして,それに計測制御が必要なハードウエアを必要に応じてインストールすることによって,コンピュータの中に測定機を作ってしまうという考え方です。ところで,コンピュータの進歩は日進月歩ですが,コンピュータベースの計測器ですと,コンピュータの性能が上がると計測器の性能もそれにつれて上がることになり,これは素晴らしいということで,我々もコンピュータベースの計測機器をコアにしようとなったのです。

 

豊田:
 基本的には,計測器とコンピュータは情報のやりとりをするわけですね。計測器は,測定の仕方や精度などで計測技術の向上が見られると,スタンドアローンな測定機器の場合には,制御やデータ処理のCPUなども全て変更しなければならなかったわけですね。
 NI社のコンピュータベースのシステムを導入されるということは,計測してデータを得ることとその処理やそれを用いた制御などを独立させていることが特徴ですか。

 

社長:
 そうですね,そこが一つの売りです。計測機器のフロントパネルというマン・マシン・インターフェイスに関してはLabVIEWを使って開発すると素晴らしいものが設計できるというところも大きな売りになっています。そのような意味で,今や計測の業界では標準のツールになってきています。
 私の知る限りで,計測の分野で多くのお客様がおられ,航空機,半導体,医療機器,特に多いのが自動車分野なのですが,多くの分野でこの考え方が主流といえます。

 

豊田:
 それは,ある意味で使う側がかなりのコンピュータシステムを持っているところという意味でしょうか。

 

社長:
 そういうケースもあるかと思いますが,必ずしも大きなコンピュータシステムが求められるわけではなく,計測と制御・データ処理を独立に扱うことができることのみが重要となります。データ処理に大きなシステムが要求されるわけではありませんので。

 

豊田:
 今は計測を計るだけで終わらせない,次に繋げることができ,計るが活きるということが売りということですね。

 

社長:
 そうです。エッジコンピューティングの考え方で,意味のあるデータだけを抽出して,サーバやクラウドに貯めていくことができるようになるのも,我々が得意とするところです。
 いま企業でも大学でも,一生懸命集めておられるデータで,活用されているものといえば,ほんの数パーセントではないでしょうか。我々のところでは,まだ,データを解析・分析するところまで業務は至っておりませんが,そもそも解析・分析をしやすくなるようなデータをため込むところまでを行っております。例えば構造化したデータをクラウドにあげるとか,エッジコンピューティングの考え方で,必要な事象の前後の意味のあるデータを切り取ってあげるなどを試みております。

 

[註:エッジコンピューティング:ユーザーの近くにエッジサーバを分散させ,距離を短縮することで通信遅延を短縮知る技術。端末側で行っていた処理をエッジサーバに分散させることで,高速なアプリケーション処理が可能になり,サーバとの通信頻度・量が多いビッグデータ処理などに効果が期待されている。]

 

豊田:
 現在は記憶容量が大きくなったために,何でもかんでもデータを蓄える傾向にありますが,データの選別が求められているでしょうね。ただ,選別するということは現象なりを理解していないとダメで,そのあたりのポイントはお客様の理解と要求にも依存しますね。

 

「喜びを共有する企業」を目指して:世界シェアNo.1製品を生み出す

 

豊田:
 これまで御社の事業の特長とするところをお伺いしてまいりましたが,御社の経営理念として,
 ○ 私達は、社会を支える誠実なものづくりを第一とします。
 ○ 私達は、地球に優しく、世の中にないものづくりに挑戦します。
 ○ 私達は、物心両面の豊かさを追求し、関わる全ての人々と喜びを共有する企業を目指します。
を挙げておられますが,特に「喜びを共有する企業」を目指すと謳っておられますが,その意味するところは何でしょうか。

 

社長:
 当初,この理念を考えるにあたって,いろいろ思い悩んだ経緯があります。もともと先代が作った理念を基にしております。喜びの部分は,元々「Success(成功)」を目指すという表現で考えていたのですが,そうなると,必ず成功しなければならないといけないとなります。現実を見ると,我々の仕事はカスタムメイドで,チャレンジングな装置やシステムを作ることが多いので,やってみないと分からない,要求仕様を100%満足できないものもあります。不幸にして目指していた性能の80,90%程度までは何とか出せそうですが,それ以上となると課題が解決できず,難しいなということもあります。このような場合にも,諦めずに取り組んできており,100%ではないが,よくぞそこまで頑張ってくれたね,次回は120%目指して頑張ろう,「成功」とはいえないのですが,結果的には「ありがとう」という言葉を頂け,喜んでいただいたことは,我々の取組も評価していただけたと考えています。このような意味で「喜び」を共有できることを理念としているのです。

 

豊田:
 ということで,「共有」はお客様との喜びの共有が大きな目標なのですね。それと共に,社としての,そして社員同士の喜びの共有も求められているのですね。

 

社長:
 社員にとって,できたという喜びがあれば良いのですが,そうでなくても,認めていただいたレベルまで行いけば,やりがいにつながるということを求めているのです。

 

豊田:
 このように,人の繋がりを大切にしておられることがよく分かりました。
 少し話が変わりますが,「ビジョン2030」を掲げられておりますが,このビジョンの柱と経営理念との関係などでのポイントをお話いただけますか。

 

社長:
 そうですね,100年企業を迎えるに当たって,数値目標などを掲げているのですが,2030年にはこのような企業になっていたいという,夢・ビジョンを掲げております。
 その中での一番のポイントは,カスタムメイドで一品一様のものづくりをしていると,売り上げ目標の達成には,規模を大きくするしか方法がないのですが,確かに規模は大きくはしていくのですが,規模を追わないでということになると,我が社のオリジナル製品・パッケージ製品を販売して利益を上げて行かなければならないと考えており,ビジョンの一つに,「世界でシェアNo.1となるようなパッケージ製品・計測システム」を生み出すことを掲げています。それを具現化するためのネタを社員と共に常に3,4つのアイデアを温め,前に進めて行っております。

 

豊田:
 確かに高度成長期のように作り続ければ売り上げが伸びるというような時期ではありませんので,オリジナルは重要なキーワードでしょうね。特に,コンピュータが入り,AIの活用が叫ばれるとき,単に数の理論でなく,量でなくて質が問われる訳で,掲げられているのは「質の探求」ということで,「オンリーワン」を目指すということですね。
 もう一点は,畑野社長のところは,注文を取っての一品製品が多くて,お客様の要求があってのことになるわけですね。そこでは,オンリーワンとお客様との要求と合わなければならない訳で,
このあたりはどのようにお考えですか。

 

社長:
 やはり,きっかけとなるのは,お客様が抱えておられる課題であり,その情報に基づいて,こういうものがあればということで検討し,それがうまくゆけば,同じような事業の企業に水平展開で規模の拡大もできます。このような点からも特定の企業様が抱えておられる課題を解決することが一番のカギになると考えています。

 

SFAの活用とアメーバ組織化を目指して
 

豊田:
 一番大事なことは,これから何が要求されるかということでしょうね。計測分野では対象がかなり変化してきておりますが,計測の必要性は何ら変わりないと思われます。その方向性の見極めが需要ですが,例えば,測れる精度要求が一段と厳しくなるとか,計測スピードが求められるとか,あるいは,一つの指標の計測であったものが,関連する情報の同時計測など,いろいろな方向性の拡がりが考えられますがこのあたりの見極めが重要なのでしょうね。
 この場合いかに情報を収集し,それをいかに展開するかが重要となりますが,どのような対応を取っておられますか。

 

社長:
 勿論,社には営業マンが定期的にお客様を訪問し,そこで得た情報を,毎週の会議で,営業サイドと設計サイドの情報交換の場を構築し,また,今年からは,まだまだではありますが,セールスフォースオートメーション(SFA:註参照)を取り入れて,SFAというツールを介して情報を共有する仕組みの構築を図っています。

 

[註:SFAとは、顧客情報や商談情報、日報などの営業活動に必要な情報を一元管理して、後方支援するためのシステムのことである。
 営業活動では、顧客の社内情報や取引傾向、過去の商談や競合他社の情報などが成否の鍵を握るが、これらの情報は営業担当者個人が持っており、営業部門では共有されにくい。そのため、営業担当者が急に変わった時に、過去の情報が引き継がれず、徐々にその顧客に対する営業活動が衰退してしまう恐れがある。
 SFAでは、営業担当者個人の中に留まりがちな有用な情報を、システムで共有化することで営業活動の促進を図る。また、日報をもとに上司がアドバイスをすることも可能である。営業担当者が情報を登録や参照などをしやすいように、携帯電話を活用したSFAも多い。]

 

豊田:
 このあたりが,100年企業で目指しておられる「アメーバ組織」と関係があるのでしょうか。

 

社長:
 そうですね,注力するアカウントとか業界の情報,ニーズをいち早く捉えて,それを担当する部門で水平展開するシステム作りを考えております。
 いまは,自分たちが所属するアメーバのメンバーは自分の専門の分野だけをやっていれば良いとの感覚に陥っていますが,逆に,ちょっと他のアメーバのメンバーの仕事が忙しいので手伝って欲しいという状況の中で,変なセクショナリズムが生じてきたりもしています。これは当初の狙いとは違うところも出てきたので,修正も図っています。

 

豊田:
 そこで必要なのは,ものづくりで言われる多能工かも知れませんね。そこで,システムが機能するためのポイントはどのように考えておられますか。

 

社長:
 例えば,自分のアメーバにとどまる人と,身動きができる人とは,一応切り分けてはいまして,とどまるものは,マネージャーや,サブリーダーですが,担当者は行き来ができる人材として,行き来ができるという柔軟なシステムとするルールは設けて行っていますが,まだまだ十分に機能してないところもあって課題でもあります。
 今後も新しい工夫を考え,やはり100年企業の実現に向けて努力して行きたいと考えています。

 

計測の活用の質的変化:監視装置への拡がり

 

豊田:
 ところで,現在は「計測」が大きなキーワードなのですが,既に議論にもなりましたが,測るという技術とデータを処理する,あるいは制御するという技術があろうかと思いますが,どちらかに重点を置いておられるのでしょうか,それとも重点を置いてはダメなのでしょうか,事業の方向性についてお聞かせ下さい。

 

社長:
 そうですね,やはり現状でいえば「測る」方に重点があります。
 我々の企業は社名にもありますように「電気計測」ですので,最終的に物理量が何であっても,世の中にそれを測るためのセンサーはいっぱいある訳で,それで測った量が電気信号に変えるところは何ら変わりないのです。したがって,電気信号に変わるものであれば,今は何であっても測り得るということになります。そのようなシステム開発は,現在も進めていますし,これからも進めていきたいと考えています。いまや,電気計測器は産業界のマザーツールで,計測ということは世の中からなくなることはないと考えます。

 

豊田:
 やはり今問題なのは,何を計測するのかということでしょうね。
 そこで,事業形態としては,我が社ではこんなものが測れるので,このようなことをされてはどうですかというような提案をされていくということですね。

 

豊田:
 測るということでは,早く測るという要求と,高いレベルの精度が要求されるもの,など対象によっていろいろとあろうかと思われますが,今どこかに重点を置いておられるのでしょうか。
 例えば,計測の仕方そのものをこちらで開発されているのでしょうか。

 

社長:
 計測の原理まで入り込んでの展開は行っていません。計測の処理・評価で大切なところは,計測結果の目盛りが電気信号に変わらなければならないわけで,それを目的に応じて処理するものを開発しており,その意味では,自社の事業は,計測そのものよりは,計測が試験装置の一部であり,装置・システムそのものの開発にあるといえます。

 

豊田:
 そこで大切なことは,先に述べた何を測るか,どういうふうに処理したいのかというお客様の要求が出てくれば対応するということですね。

 

社長:
 一番大切なことは,お客様が何を解決したいと考えておられるのかが基本であり,その要求に的確に対応することが基本です。

 

豊田:
 計測では,できあがった構造や製品のメンテナンスのための計測や,生産ラインにおける必要精度や流れを確認して,タクトタイムをあげ,歩留まりをよくするための計測などがありますが,御社の強みはどのあたりにあるのでしょうか。

 

社長:
 そうですね,今のところ,生産システムの効率化に活用されている製品が多いのは事実です。
 でも,最近は,MRIの監視装置を売りに出しているのですが,正確に言うと超電導マグネットの状態監視を行う装置を開発しています。超電導マグネットメーカー様向けの完成品の超電導マグネットの監視装置として販売しているのですが,メーカー様の技術者の意向として,超電導マグネットを作る過程での生産工程でクエンチはヘリウムガスの損失など,1回のクエンチで数十万円の損失となりますので,製造過程でのクエンチの検出装置を開発して欲しいということになっており,予兆検出の装置開発が新たな課題として上がってきております。

 

豊田:
 まさに,一つの技術開発の拡がりの例ですね。このように計測技術というものは拡がりのある技術で,その展開をいかに見つけるかの目利きが重要なのでしょうね。

 

AIを活用した予知技術による付加価値の創成

 

豊田:
 このような拡がりをもたらすのも,計測とコンピュータを分離・結合したことにあり,現在大きな話題となっている,AI,IoT技術と密接に関係しているのですね。

 

社長:
 そうですね,私も2年ほど前には,「AI」は中小企業に,果たして関係してくるのだろうかと考えていました。今や,それが当たり前のようになってきました。

 

豊田:
 AIに関係して,社内で活用するということや,製品として売りにすることなど行っておられますか。

 

社長:
 劣化監視をするに当たって,AIといっても,正確に言うとディープラーニングになるのかも知れませんが,深層学習させてモデルを構築して新しい監視システムへの応用を考えています。今は超電導マグネットをスタンドアローンで監視機能を持ったものとして病院などの電気室にあり,何か問題があったときのみメーカーに連絡が入る仕組みなのですが,それを拡大して,常時監視してデータを得て,かつ常時見ているデータを深層学習させることによって,故障の予兆とか,クエンチが発生した前後のデータを後に解析して,その原因が何であったかを探るなどの付加価値を付けていこうとしています。
 装置のハードとしては,ほぼ完成しているものが多いので,あとは,いかに付加価値を上げるかということになるのですが,その切り札となり得るのがAIかなと考えています。
 現状の計測システムについてみても,このような要求は非常に高いですね。

 

豊田:
 今までは故障してから直すのが常識だったのですが,故障の前兆をつかまえて対応することへの要求は高く,そのような事業形態に対応できる技術力があるとお考えでしょうか。

 

社長:
 そうありたいと考えていますが,AIの知見などについては,産学連携などを通じて更に高めることを目指しています。

 

豊田:
 一昨日別の会合で2050年の産業はどうなるかなどの議論があったのですが,そこでの話題の一つに,AI技術が進展したときに,無くなる職種と残る職種(・技術)があるとの指摘がありました。それにも関係しますが,AIの進歩は単なる情報の蓄積で済まされるようなものは,ものづくり分野でもなくなるのかも知れません。蓄えられた情報をどのように活かすかのシステムが求められるのでしょうね。その意味でも,計測するだけでなく,それをどのように活かすかが需要なので,その意味においては,畑野社長のようなところは仕事が増えるとも言えますね。

 

社長:
 そうなるように頑張りたいと思います。

 

豊田:
 AIが人の役割を奪うのでなく,人の仕事を助け,向上させるものになるということで,そのような活用の仕方が問われているのでしょうね。

 

社長:
 計測・評価の分野でも人間の限界を超えるような作業ができるようになってきており,測れなかったところが測れる,見つけられなかった情報が見つけられることと,測った情報をコンピュータ,更にはAIを活用して,単なる測るから,測ることがものの生産,製品の評価,製品の寿命評価など,多くのシステムにAIが活用できると考えており,今後の事業に活かしたく考えています。
 予兆検出などは,人間の判断能力を超えるものとして展開できる可能性があるもので,大事なのは,AIを活用したものの見方であると考えています。

 

豊田:
 面白い話がありまして,囲碁では通常は,まず四隅の陣地取りにいって,中央は埋める感覚なのですが,囲碁ソフトのアルファ碁は,中央の陣地も取りに行くそうで,定石に無いような石を打つそうです。すなわちAIの活用はものの見方をかえることにもつながるということの例といえるかも知れません。
 その意味で,先ほどの例にありましたAIを予知に使うという方向性は,新しい活用の方向性ともいえますね。

 

社長:
 現にアメリカのベンチャー企業で,2,3日前でないと確認できなかったことが,ディープラーニングのモデルを構築することによって,2ヶ月前に予兆が確認できたと報告しています。これによって計画的に保守や,部品の交換などができるということになり,いろいろな意味でのロスをなくすことができます。
 このような点を重視して,これまでの実績に何かをプラスした事業展開を考えております。

 

人材のダイバーシティが変化と活性化をもたらす:Creativeな人材であれば

 

豊田:
 以上のような事業展開を行うためにも,一番大事なのは「人」ですよね。畑野社長の事業では,特に人材の役割が大切な感じがします。
 そこで必ずお聞きしなければならないのは「ダイバーシティ」についてでしょう。平成27年度に「新・ダイバーシティ経営企業100選」を受賞されていますが,「ダイバーシティ」という発想が生まれたのはどのような契機や事情だったのでしょうか。

 

社長:
 発端は,至って単純でして,海外の市場開拓であるとか,海外企業とコラボレーションして共同開発するに当たって,そういうブリッジ人材が必要であるということで留学生を採用したことが始まりです。

 

豊田:
 狙いは海外展開のための人材だったのですね。ある意味単純な発想ではあったのですね。
 その採用から「外国籍」と「女性」という「ダイバーシティ」につながっていってようで,御社の女性社員割合も高いですね。

 

社長:
 およそ1/3が女性社員です。

 

豊田:
 発端はともかくも,ダイバーシティ人材の活用でどのような効果が出てきましたか。

 

社長:
 当時留学生を採用したことで,当初の目的は達成でき,おかげさまで海外のお客様も増えました。中国,台湾,韓国,東南アジア,それからメキシコなどにも開拓できました。繋がりができたことは確かなのですが,やはり,外国籍人材は圧倒的に能力の高い人材が確保できたことが大きいです。外国籍だから海外との交渉にというだけでなく,日本人特有の凝り固まったような考え方を持たず,目的に向かって突き進んでいけるだけのバイタリティをもつ優秀な人材を登用することによって,社全体にも変化をもたらしてくれました。
 一方,技術集団では男性技術者が圧倒的に多いのですが,そこでは理屈がない世界があるのですね。なぜこうしているのかというと,今までこうしてきたからというようなことがあるのですね。

 

豊田:
 それが男社会であることの「バイアス」なのですね。

 

社長:
 ところが,ものづくり女子で,現場でやりたいという希望を持って入社してくれた女性社員はなぜこうなっているのだろうと疑問を抱くのですね。こうした方がうまくいくのではとの考えを聞くと,「目からうろこ」で,合理的に考えたら彼女の提案の方が確かに良いなということに気付きました。それによって自然と生産プロセスが変わってきますし,ミスも減るという効果が生まれました。

 

豊田:
 そのような理系の優秀な女子社員は,どのようにして獲得されているのでしょうか。

 

社長:
 採用している女子社員は,必ずしも理系出身のリケジョではないのです。特に理系である必要もありません。

 

豊田:
 そうですね。今の時代,理系・文系と区別することは,あまり意味が無いのかも知れませんね。
 受験時に数学が,物理がきらいということで文系にいっている女性も多く,世の中の仕事は数学だけで成り立っているわけでもないので,やはり意欲の高い人材が求められるのですね。

 

社長:
 そうですね,あまり文理にこだわることなく採用し配置するのですが,ただし条件がありまして,ものづくり企業ですから,何ら専門性が無くとも,ものづくりに興味を抱いていることが不可欠と考えています。料理が好きであるとか,お菓子作りが好きであるとか,何でも良いのですがCreativeなことが好きであることが重要ですね。
 このような人材が会社に興味を持って頂けるならウェルカムで,極端な話「おたく」でも良いのです,やる気があれば。

 

豊田:
 面白いですね,確かに料理をする人はCreativeですよね。同じ野菜,同じ肉であってもいつも同質でないのに,ほとんど計量することもなく調味料を加えて,いつも同じ味を作り出すのですから,素材を厳選し,寸法精度をきっちりと確保して組み立てるような機械系のものづくりからすると本当に素晴らしいものづくりかも知れませんね。

 

豊田:
 いずれにしても,ダイバーシティという「異質な個」が加わるということが大事なのでしょうね。更に,それを受け入れるような素地が必要なのでしょうね。

 

社長:
 例えば,工程管理の面で,女性目線で厳しい指摘をされると襟を正さなければということにもつながり,そういった点でも力になってくれています。この形をどのように「見える化」するかが課題かも知れません。

 

豊田:
 ところで,近年は中小企業では人材獲得も難しいようですが,今後の人材確保も課題ですね。
 話は変わりますが,これからどのような人間が残っているかの議論の中で,これまでの大きな流れの中で「メンバーシップ型人材」が主流であったように思われます。それは,大企業や役所などに入ってメンバーになり,与えられたメンバーシップで一生過ごしていくような人材です。これが日本の今までの形だったように思われます。入りましたということが大事なのです。
 これからは,「ジョブ型」「プロフェッショナル型」「アライアンス型」のような人材が残るといわれています。仕事をなしとげ,考え方に専門性を持ち,一生勉強ですよというような人材が注目されると。
 だからこそ,特長ある中小企業が生きる道もあるかも知れません。ある意味,人を大事にし,先進的な仕事をしておられる御社は,メンバーシップ型でない先進型の形を先行しているともいえますので,頑張って頂きたいですね。

 

社長:
 我々の規模になりますと人が宝ですし,お客様からいかにしてニーズを引き出すかが大事で,そのためには人間力を高め,お客様から一目置かれるような人材にならなければなりません。我々が成功体験に導くことが重要で,そのような人材養成にも心しております。

 

社長:
 なお,人材に関係しては,中小企業家同友会で共同求人部の大学求人チームのリーダーをつとめております。そこでは2本柱で進めており,まずもって求められる企業にならなければならないところの企業づくりの視点と,もう一つは,情勢に左右されない求人活動をいかに行うかです。一つ目は,当然ながらまともな企業になりましょうということであり,経営指針,賃金体系,就業規則,福利厚生,などしっかりと整備すべきであるということです。一方,求人活動においては,中小企業は,企業の存在そのものを知ってもらう機会が圧倒的に少ないのです。学生さんが選ぶのは,知っている企業か大企業であり,どんなにユニークな中小企業でもその存在が知られていないとダメであり,まず知って頂く機会を設けるために,オモロイ中小企業魅力発見フェアのようなものを企画して,その場で,中小企業経営者と学生やキャリアセンターの担当者とがフリーで議論して頂くことを行っています。これはリクルーティングというよりは,企業を知って頂くことが第1の目的です。
 本年2月に初めて開催したのですが,今後このような動きが実を結ぶことを願っています。

 

豊田:
 長い時間お話頂きましたが,そろそろ終わりにということで,今話題となっている人材にも関係しますが,後進にこれは伝えたいこと,あるいは大事にしておられる言葉などはありますか。

 

社長:
 伝えるということではあまり思いつかないのですが,額に描いて頂いた言葉があるのですが,「素直な心 感謝の気持ち」で,この二つは,戒めのように,日々忘れないようにしております。

 

豊田:
 この中でも素直な心が一番難しいでしょうね。

 

社長:
 これには伏線がありまして,私は後継者なものですから,私が丁稚奉公から帰って入社したとき,一兵卒でしたが,当時かなり社長にたてついて,足を引っ張ったことがありました。その度に言われたことが,「もう少し私のいうことを素直に聞け」ということでした。まずもって相手の話を聞くことこと,お客様に対しては傾聴という言い方をしましたが,やはり素直な気持ちで相手の言うことを聞くことを心がけています。

 

豊田:
 素直に聞くことは大学の先生は苦手な人が多いでしょうね。一番難しいのは,先入観を持たずに学生の話を素直に聞くことでしょうね。それがないと人は育たないです。

 

社長:
 それと共に,今社長としてあることに,常に感謝の気持ちを忘れないようにしています。感謝の気持ちを持って,できる限り毎朝トイレ掃除を続けています。トイレ掃除は社員の皆さんに対する感謝です。

 

豊田:
 それはすごいことですね。
 それでは長時間にわたりいろいろとお話をお聞かせ頂きどうもありがとうございました。感謝の気持ちを持ってインタビューを終わらせて頂きます。

 


先代と共に

 

(インタビュー後記)
 インタビューに先立って,会長様を交えて懇談させていただきました。コンピュータの出現を活かされた先代の想いと,小さい企業ながら,大学との産学連携を積極的に進められたことや,業界をまとめられた様子などお話を伺えました。
 社長様とのインタビューでは,畑野社長の人柄の「謙虚さ」と「強い想い」を感じました。社長を引き継がれて掲げられた「喜びを共有する企業」の理念のもと,「100年企業」を目指す心意気を感じました。
 事業内容で,計測と評価の2つを融合して,計測が生きる評価システムの構築は,研究で実験を主としてきたものにとって,まさに理想型ともいえる。多くのデータを関連させて,それを評価に活かすとこは,まさに今話題のIoTそのものともいえ,スケールの違いはあるが,今騒いでいるIoTは先取りされているとも感じました。常に,「計る」を活かす取組みは,製作に関わる人は勿論,お客様にも喜びとなることを考えておられる姿勢を感じました。
 現在,インタビューアーは大学でダイバーシティ・プロジェクトの手伝いをしているが,大学での理工系は女性が活躍する環境はまだまだといえますが,畑野社長ところでは,従業員の1/3が女性であることは,やはりすごいことでもあり,更に,外国籍の留学生なども積極的に採用して,違った発想の人材で社内の固定化している風土を変えようと考えておられることも,次の活力につながるものと感じました。
 今の規模をどのように超えて発展されるかに,大いに期待して。

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